国指定史跡 手宮洞窟


小樽市手宮洞窟保存館
小樽市手宮1丁目3番4号 電話(0134)24-1092




手宮洞窟の発見と保存
手宮洞窟は1866年(慶応2年)相模国(現在の神奈川県)の小田原から、朝里地区の鰊番屋の建設に来ていた、石工の長兵衛によって発見されました。手宮洞窟周辺は、小樽軟石と呼ばれる凝灰岩が露出しているところで、長兵衛は建築用の石を探している途中で偶然、洞窟内の岩壁に様々な模様が刻まれている事を発見しました。 この彫刻は1878年(明治11年)、榎本武揚(えのもとたけあき)によって学会に紹介され、さらにジョン・ミルン(J.Milne:英国人:地震、地学者)によって初めて学術的な観察と報告がなされました。また開拓使(現在の道庁)、渡瀬荘三郎(後に省三郎)などによって次々と調査が行われました。 その後、手宮洞窟は、前面の岩が削り取られ、また洞窟の上に鉄道が敷設されたりしたため、当初の姿を徐々に失っていきましたが、明治の中頃から雨除けのひさしをかけたり、その保存も行われてきました。1921年(大正10年)には、その価値が認められ、国指定史跡となりました。 1949年(昭和24年)にはブロンズによる模刻と保存覆屋の整備を行いました。発見以来120年以上が経ち、風化、剥落の進行を防止し、貴重な文化財である手宮洞窟を後生に伝えるために、昭和61年から保存修理事業を開始し、約10ヶ年の歳月を要し、平成7年に手宮洞窟陰刻面を保存する、「手宮洞窟保存館」を完成させました。

手宮洞窟とその時代
手宮同窟に描かれてる彫刻(陰刻画)がいつ誰によって刻まれたのか。それが何を表現したのか、かつてはいろいろな説がありました。しかし現在までに行われた様々な調査研究により、ある程度の事がわかるようになってきました。 この彫刻が刻まれた時代は、発掘調査により、今からおよそ1600年前頃の続縄文時代中頃〜後半の時代で、本州の弥生時代の終わり頃から古墳時代の初めの時期にあたります。ごの頃の北海道は、豊かな自然を背景とし、縄文文化をさらに発展させた狩猟採集文化の時期で、その文化は、新潟県からサハリンにまで及んでいました。 同じ時代に刻まれだ彫刻が、余市町のフゴッペ洞窟にあります。フゴッペ洞窟の彫刻は舟、魚、人等が描かれたものと考えられますが、手宮洞窟のものと非常に良く似ているものがあります。手宮洞窟の彫刻は、石斧などによって刻んだ後、磨いて仕上げたと推定されます。発掘調査では、彫刻を刻んだ岩や続縄文時代の土器と共に、刃の部分が傷んだ石斧も出上しています。また、フゴッペ洞窟の調査では本州やサハリンから来たと思われる金属器や土器が出土し、手宮洞窟に彫刻が刻まれた時代に盛んに交流が行われていたことがわかります。

手宮洞窟の彫刻
国内では、手宮洞窟のような彫刻は、現在のところ、フゴッペ洞窟にしか発見されていません。そのため、この彫刻をめぐっていろいろな解釈がありました。かつてはこれを「文字」として考え、解読した人すらあらわれました。しかレ、フゴッペ洞窟の発見以来、アムール川(シベリア東側を流れる川)周辺に見られる、岩壁画と良く似た古代の彫刻であることがわかってきました。シベリアのサカチ・アリアン遺跡の岩絵とフゴッペ洞窟にはほとんど同じような舟の像が描かれていますし、手宮洞窟にも角のある人と似たものもあります。このような岩壁画は日本海を囲むロンア、中国、朝鮮半島などに見られ、手宮洞窟もこのような日本海を囲む大きな文化の流れを表すものだと考えられます。 手宮洞窟の彫刻の特徴は、角のある人と思われるものが表現されている点にあるといわれています。 壁面に刻まれた彫刻は、人の像をかなり忠実に模写したと考えられるものから、かなり抽象化したものまで、いくつかのグループに分けることもできます。さらに、手に杖のようなものを持った人や四角い仮面のようなものをつけた人が、描かれています。このほか、角のある四足動物れています。この人の像といわれる彫刻は、フゴッペ洞窟にも見られ、刻まれた時代により変化していくことが知られています。 このよラな角をもつ人はシベリアなどめ北東アジア全域でかつて広く見られたシャーマン(激しい踊りや祈りをして占いや収穫のお告げなどをする人)を表現したものではないか、という説が有力です。 手宮洞窟はこの様に4〜5世紀頃、北海道に暮らしていた続縄文文化の人々が、日本海をはさんだ北東アジアの人々と交流をしていたことを示す大変貴重な遺産です。全国的に見てもとても珍しいもので、古代人の心を知る上で第一級の遺跡といえるしょう。手宮洞窟保存館ではカプセルで保存された彫刻(陰刻画)を実際に目にすることができます。また世界各地の洞窟壁画や手宮洞窟の時代である続縄文文化の生活の様子を知ることが出来ます。

手宮洞窟陰刻画(実物) 手宮洞窟陰刻画全体図(模写図)
陰刻画に30%模写図のレイヤー合成写真 陰刻画に50%模写図のレイヤー合成写真
photo by M.Minato

公開時間(4月1日〜11月3日は無休)
 4月1日〜11月 3日 午前9時   〜午後6時
11月4日〜 3日31日 午前9時30分〜午後5時
休館日  11月4日〜3月31日の毎週月曜日、祝日の翌日
(但し、月曜日が祝日の時は翌々日、祝日の翌日が土・日曜日の時は直近の火曜日)
年末・年始(12月29日〜1月3日)
入館料 無料



手宮洞窟シンポジュウム記録集
波涛を越えた交流 -- 手宮洞窟と北東アジア --
平成9年5月 小樽市教育委員会

資料提供 小樽市教育委員会


2005年4月より「手宮洞窟保存館」は有料になりました。(一般100円)


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