小樽の文学史 |
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こころよく、我にはたらく仕事あれ、 それを仕遂げて、死なむと思ふ |
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かなしきは、小樽の町よ、 歌ふこと、なき人人の、声の荒さよ |
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冬が近くなると、ぼくはそのなつかし、い国のことを考えて、深い感動に捉えら、れている そこには、運河と倉庫と税関と、桟橋がある そこで、は人は重っ苦しい、空の下を どれも背、をまげて歩いている、ぼくは何処を歩いて、いようか どの人を、も知っている 赤い、断層を処々に見せて、いる階段のように山、にせり上がっている街、を ぼくはどんなに、愛しているか分からな、い |
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海の捨児、私は浪の音を守唄にして眠る、騒がしく絶え間なく、繰り返して語る灰色の年老いた浪、私は涙も涸れた凄愴なその物語を、つぎつぎに聞かされてゐて眠つてしまふ、私は白く崩れる浪の穂を越えて、漂つてゐる捨児だ、私の眺める空には、赤い夕映雲が流れてゆき、そのあとへ星くづが一面に撒きちらされる、ああこの美しい空の下で、海は私を揺り上げて揺り下げて、休むときもない |
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がんぜ、夏休みなると、おれたちは道ばたの、ざっぱ木を拾い拾い赤岩ポントマルへ、毛コのはえた兄分は褌、おれたちはふりちん、それっともぐり、一尋二尋きび悪いほど、青い岩肌に、めんこいがんぜ一つ二つ、腹時計がおひるに、なる、ざっぱ木のたき火に、がんぜのへそをぬいてほうりこむ、こんがり焼けたがんぜが、おれたちのひるめしだ、夕焼けると、みんなの唇は茄子色、ほら鴉が家さかえって、くぞ、おらたちもかえるべ、冷えてちぢまりきった、皆のきゅうすを揃え、一二の三、おしっこの消火だ、あああのがんぜが、出世して高価高質、の珍重味とは |