江戸っ子はやぶでござんすぬき一丁
浅草 並木薮蕎麦
- 起 -
本物の「江戸前」の握り寿司を食べる為に辨天山美家古へ行ってきました。その鮨の参考文献に先代(四代目)、内山榮一氏の「浅草寿司屋ばなし」と言う本の中に並木薮蕎麦のお話がありました。この本を読む前後に小樽蕎麦・料理「薮半」をホームページにアップしました。随分と前に「薮半」へは行った事がありますが、改めて行ってみてこの店の素晴らしい所に気が付いてしまいました。「ぬきで一杯」と言う伝統的な蕎麦の食べ方を守り通す店は自分の身の回りには少ないせいもありましたが・・・迷わずここを訪れる事を決めました。
- 承 -
またまた、正直に話しますと、蕎麦に関しての知識は全く持っておらず、お昼ご飯に「蕎麦」と言う感じもありませんでした。ここを訪れる客も後を絶たず、ましてやお蕎麦屋さんに予約がある訳もなく行ってみました。頂く物は決めていました。今の季節、大推薦の「鴨南蛮」と一番、シンプルな「もり」です。心残りだったのは「お酒」を頂けなかった事です。最初に「ざる」です。有名な話ですが、ここの「もり」のざるは普通の「もり」のざるの逆、つまり、伏せたざるの上に乗ってきます。ちょっと驚いたのがその量です。少ないのです。細い麺と何とも美味しいつゆで頂いた後は「鴨南蛮」です。これは、知り合いのS氏の推薦で頼んでみましたが、この様な蕎麦は初めてです。普通、蕎麦は冷たいのが好みなのですが、この暖かい蕎麦は素晴らしく美味しい物でした。鴨の肉とつみれ、特にこのつみれが何とも言えない味でした。七味は無く、山葵と刻み葱がつきます。暖かい葱は刻みではありません。ぬきで一杯出来たらこの上ない幸せだとも思います。
浅草 並木薮蕎麦
住 所 台東区雷門2丁目11-9
電話番号 03-3841-1340
営業時間 11:30~19:00
休 日 毎週木曜日
創 業 大正2年
- 転 -
此処、並木薮蕎麦の常連と思われるお客は何とも年季が入った感じがします。お邪魔した日、同じテーブルの方も後ろの方も横の方も皆、お酒を召し上がっています。その後は当然、蕎麦です。お酒には「蕎麦味噌」が付き、「海苔」と言う品書きもありました。前で楽しんでいる方の様に酒と蕎麦味噌、海苔とざると鴨南蛮は最高のコースであると思いました。美家古の3代目や歌舞伎役者の初代中村吉右衛門さんが「ああ、並木の蕎麦が食べたい」と言う気持ちはこの御仁にもあるのでしょね。逆も少し、今までの「蕎麦」の価値観の違いでしょうか?ちょっと、お値段がお高い気がします。それともう一つ、店の前に「浅草 薮蕎麦」と書かれた自転車が2台ありました。確か、出前無しの店だったので、やはり、仕入れ用なのでしょうか。
- 結 -
昔の寿司屋は「酒を飲むのだったら蕎麦屋へ行け!」と言っていたのがやっと理解出来た気がします。飲んだ後のラーメンや最近、ちょっとくどいと思い、蕎麦を食べていたのは丁度、逆で別に個人の好みだと言われたらそれまでですが、やっぱり何か感じる物があります。個人的には小樽でも浅草を気取って、蕎麦屋で「ぬき」で「酒」と「蕎麦」、その後、寿司屋でお好みで半合(五、六貫)程、頂いて最後に「お茶」が一番、楽しめる飲り方なのではないでしょうか・・・
参考文献は「浅草寿司屋ばなし」の他、浅草並木薮蕎麦、先代のご主人、故堀田平七郎氏の並木薮蕎麦そば遺文「江戸そば一筋」です。